2026年9月26日(土)・27日(日)に、日本才能研究学会の、第1回年次大会が開催されました。
日本SEM協会は、シンポジウムに登壇させていただき、またポスター発表もいたしました。
今回は、この第1回年次大会の報告をさせていただきます。
日本才能研究学会とは
日本才能研究学会は、2026年3月10日に発足した、教育学・心理学・社会学・哲学・工学・脳科学・医学など多角的な知見を結集し、「才能」をめぐる諸相に科学的にアプローチする学術団体です。
当協会代表理事知久麻衣も理事を拝命し、法人としても賛助団体として協力させていただいております。
学会発足にあたって、知久がしたためた note もご覧ください。

「才能」という言葉の受け取り方は、立場によってもそれぞれであると、日々実感しています。
この学会が、「才能とは?」といったことに正面から向き合い、互いの「捉え」を共有・議論し、それらの「知」が子どもたちの人生や学びに生かされる場になることに、心から期待しています。
第1回年次大会
記念すべき第1回の年次大会は、日本才能研究学会の事務局が置かれている愛媛大学のみなさんが実行委員となり、愛媛県松山市で開催されました。
知久を中心に当協会で作成したパンフレットをご覧ください。



開会式・学会長講演・特別講演
開会式では、たくさんの方からいただいたお祝いのメッセージから、文部科学省初等中等教育局教育課程課 教育課程企画室長の栗山さまからのメッセージ、そして、当協会の学術顧問でもあるレンズーリ教授・リース教授からのメッセージの動画が披露されました。
レンズーリ教授・リース教授からのメッセージの日本語訳と編集を当協会が担当させていただきましたが、日本の教育のこれからへの示唆と励ましの気持ちが込められた大変あたたかいメッセージで、ありがたい気持ちでいっぱいになりました。
このメッセージに呼応するかのように、松村暢隆先生が学会長講演で、日米才能教育の歴史的展開をお話しくださいました。
これは、次期学習指導要領での「特異な才能」の特例制度を見据えたもので、「才能教育」のこれまでの流れがよく分かる、密度の濃いものでした。
続いて行われた特別講演は、松山にちなみ正岡子規についてのお話でしたが、正岡子規は、俳句づくりそのものというより、ファシリテーターとして才があったという点に大変興味をそそられました。
「好き」なことは別にあったけれども、それをそのままではなく、自分のできること、やるべきことに「才」を発揮したというのは、一見、「好き」ではうまくいかなかった例に聞こえます。
ですが、「俳句とは」を考えるために古今東西の文献を読み漁ったというエピソードからは、俳句文化の正当な継承への並々ならぬ情熱を感じます。
レンズーリ教授の才能の三輪概念と考え合わせると、この情熱が「才能」となって現れたのではないかと、そんなことを思いました。
これに先立ち、開会式ではサプライズの俳句講座もあり、「坊ちゃん」スタイルの隅田先生、大学院生のみなさまの演出と共に、知的好奇心と松山の魅力あふれるスタートとなりました。
シンポジウム
さて、いよいよ、当協会も登壇するシンポジウムです。
テーマは、
「多様な才能を支える新しい教育のかたち― 日本型才能教育へ向けて ―」
司会:角谷詩織(上越教育大学大学院教授)
演者:隅田学(愛媛大学教育学部教授・教育学部附属才能教育センター長)
鈴木秀樹(東京学芸大学附属小金井小学校教諭)
エルッキ・ラッシラ(神戸大学大学院人間発達環境学研究科准教授)
野口晃菜(一般社団法人UNIVA 理事)
知久麻衣・上田志穂
(一般社団法人日本スクールワイド・エンリッチメント・モデル協会代表理事)
指定討論者:⽯川裕之(京都女子大学高等教育開発センター教授)
八塚伝(松山市教育委員会教育研修センター事務所指導主事)
中野広輔(愛媛大学教育学部 教授・教育学部附属才能教育センター副センター長)
多方面からのご発表の中、当協会は民間での実践として、
「子どもの『好き』を学びにつなげて伸ばす」
をテーマに、当協会が運営する学び場「おうちSEM SQUARES(OSS)」で行っている学びの博覧会「おうちSEM EXPO」の効果について発表させていただきました。

メタバース空間での発表会ということで、大きな関心を寄せていただき、質問も多くいただきました。
会場に駆けつけてくださっていたOSSの保護者の方もご発言くださり、大きな励ましをいただきました。
本当にありがとうございます。
どの先生方の発表も大変学びが多く、特に、隅田先生のご発表は、日本でも才能教育の蓄積があり、それらが「いま」につながっていることを、改めて実感するものでした。
鈴木先生のご発表では、多様性の包摂という理念のもと、どの子も、それが「標準的」ではなくても、自分の関心や能力をいかんなく発揮できる、ユニバーサルな授業の実践を目の当たりにし、心躍りました。
鈴木先生が今回の学会について書かれた note もすばらしいので、ぜひお読みください。

野口さんはインクルーシブ教育からの視点で今回の「特才」の特例制度の意義をご説明くださいました。
「ちがっているなら分ければいい」という発想での制度設計ではなく、「すべての子」「ふつう」の捉え直しの機会となるような日本型才能教育になるといいなと思いました。
意見交換で当協会が発言させていただいたのは「好き」と「得意」の関係です。
当協会の発表の中で、次期学習指導要領の
「『好き』を育み、『得意』を伸ばす」
に言及させていただきましたが、
好き=得意ではないこと、
また、得意にフォーカスしすぎると、結果的に「好き」を強いることになる場合もあること
一義的には「好き」がまず尊重されることが、才能伸長と社会情緒面での成長には不可欠であること
を述べさせていただきました。
指定討論の先生方からもありがたいコメントや、石川先生からは「民間ができることは何か」といったご質問もいただきました。
そして、中野先生の「SEM、楽しいです!」というお言葉を、大変嬉しく受け止めました。
最後の締めの言葉で、エルッキ先生が「才能教育は特別なことではない」「すべてのいい教育と同じように子どもと教師の信頼関係の上に作られるもの」とおっしゃったその言葉に共感しました。
教育とは、その子の中にあるものを尊重することが大前提で、その上で、それが伸びていくよう支えることであると思いますが、それは才能教育も同じだろうと思います。
一般発表
第1回にも関わらず、たくさんの発表のお申し込みがあり、ここでは書ききれませんが、全体としては教育関連のご発表が多かったように思います。
今後、心理や社会、医療など、幅広い発表が増えていくことを楽しみにしています。
今回、小学生〜高校生のみなさんによるポスター発表もあり、大変なにぎわいを見せていました。
当協会も発表を行なっていたため、残念ながら説明を拝聴することができませんでしたが、ポスターはすばらしいものでした。
当協会のポスター発表にもたくさんの方から関心をお寄せいただきました。
テーマは、
「SEMの理念に基づく学び場における子どもの変容〜才能の伸長と社会情緒面での変化から〜」
です。

当協会では、レンズーリ先生の才能の三輪概念に基づき、
才能を、
能力 創造性 タスクコミットメント の相互作用が起こっていて、
環境やパーソナリティなどの条件とタイミングが合っているとき、
行動として現れるもの
としています。
その立場を明確にした上で、今回は、レンズーリ・スケールとも呼ばれる「SRBCSS:Scales for Rating the Behavioral Characteristics of Superior Students」を、能力、創造性、タスクコミットメントを測るスケールとして使用しました。

背景の千鳥格子は、環境やパーソナリティを表す
いただいたご質問から
時間が限られており、十分にご説明したり、意見を交わしたりすることが難しかったのですが、いただいたご質問で印象的だったのは、やはり「才能」の捉え方であり、「測定」や「成果」の意味でありました。
もちろん、それぞれの感じ方に違いはあると思いますし、「能力」が話しやすいトピックであるからかもしれませんが、どこか、「才能」=「能力の高さ」と捉えられがちなのかもしれない、という感触を持ちました。
「能力」も重要な要素ですが、「能力が高い=才能があると分かる」ではありません。
また、「能力」は測定可能に見えてしまいがちですが、「能力」とは文脈や分野に依存するものですので、その測定についても絶対的なものとは言えません。
シンポジウムの後のご質問でも「これらが、高度な探究につながったのですか?」というご質問をいただきました。
OSSの生徒の探究は、すでに「高度な探究」と考えられるものがあると考えていますが、例えばコンテスト等で賞を取ったり、広く社会に認知されたりしたものが、「成果」となり「高度な探究」とイメージされるのだろうか、と考えました。
「才能」ということで言うと、「だれかの心を揺さぶったかどうか」という点も重要であると思います。
それは、社会で役に立つかどうかといった「人材」というニュアンスよりも、もっと身近で、実感のこもった体験でよいのではないかとも思います。
SRBCSSについては、妥当性や蓋然性へのご質問もいただきました。
これは、大変重要なご指摘だと思います。
そもそもSRBCSSは、個人をラベル付するためのものではなく、「今、この生徒にはどのような教育的な支援が必要か」を見とるためのものです。
支援のためのツールと考えた場合、「評価」は到達度的なものと考えることができるかと思います。
また、今回当協会では、SRBCSSを個々人の伸びを見るための個人内評価として用いました。
高度なプログラムに推薦するなどの場面では、評価者の「主観」のすり合わせなども必要になると思います。
いただいたご質問をもとにさらに検討を深め、才能の三輪概念やSRBCSSの意義についてもより明確にしていきたいと思います。
終わりに
懇親会でも多くの方にお声がけいただき、いろんな意見交換をさせていただくことができました。
開催についての準備にあたられた、実行委員会のみなさま、学会理事のみなさまに感謝申し上げます。
第2回は鳴門教育大学での開催です。さらなる発展を楽しみにしながら、実践と研鑽を積んでいきたいと思います。


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